2002年2月22日は2ちゃんねるの日 今僕は牛丼を食べている。 いや、正確に言うと“元は牛丼であっただろうもの”を食べているのだ。 それは牛丼にしては不自然な程のタマネギが入っており、 さらにその上には大量の紅生姜によって恐ろしい傾斜が作られていた。 -紅生姜の傾斜は、富士山のそれより強く、そしてピサの斜塔よりちと弱い- そしてどんぶりの器は溶きタマゴによってヌラヌラとてかっている。 味を如何こう言う前にまず食べにく過ぎる。 器に添える手はタマゴによってベトついてしまい、紅生姜の方は少しでも気を抜くと崩れてしまう。 そしてなにより、食べていてノドが乾くのだ。 水分を欲した僕は御冷を頼もうとした。 その時だ。はっとう氏が暴走し始めたのは。 「すみません、お水キボンヌ!」 シテヤラレタ!! 店内の2ちゃんねらーが一斉にはっとう氏を仰ぎ見る。 この瞬間、彼は神となったのだ。 先陣を切ったはっとぅ氏に続き、高校生集団たちも応戦する。 「お水キボンヌ!」 「お茶、5つキボンヌ!」 店中に響く「キボンヌ」と言う単語。 非2ちゃんねらーと思われる普通のお客達は韓国語でも聞いているような眼差しでコチラを眺めていた。 そして僕の前に出された御冷・・・いや、お水。 それにはよく見るととカピカピに乾燥した米粒が付いていた。 「ここは『カピカピのおコメが付いているじゃねーかゴルァ!』と言っとかなきゃダメだよ」 と、はっとぅ氏は言う。 だが僕には出来ない、僕には・・・ けれど、一度言ってみたい気もする。 言うのか、言うのか、言うのか!? 大きく息を吸い込み右手を上げて言う。 「カピカピのおコメが・・・・・・ぶはっ!!」 ダメだ!笑いが止まらない! 僕は神には成れなかった・・・ 「すみませんこの湯呑み、カピカピのおコメが付いています」 なんとか普通に言いたい事だけ言った。 はっとぅ氏は凄い・・・素直にそう思った。 僕はダメだ。 自分から笑ってしまった。 お世辞にも殺伐としているとは言えない。 思えば終始殺伐としていたのは、はっとう氏の隣に座っていた茶髪にピアスの青年だけだった。 彼は、殺伐としたまま席に座り「大盛りねぎだくギョク」を注文し、レシートを貰って小走りで店を出て行った。 実に模範的な吉野家通だった。 第四章に続く |